2024年8月 お役立ち情報
今月のテーマ
上吊り引き戸と「見切り」の話
お施主様に間取りについての要望をお聞きすると、全体に関わるような大きなことから些細なことまで、さまざまなものが出てきます。
中には、「今の段階で言うべきことじゃないかもしれないから……」と遠慮して、なかなか口に出さないお施主様もいらっしゃいます。
でも、私たちとしては、たとえ小さなご要望でも、それを実現したいお気持ちがあるのなら、余すところなくおっしゃっていただきたいと思っています。
メリットたくさん 上吊り引き戸
あるお施主様が「上吊り引き戸」の設置を希望されたので、今回はその話を紹介しましょう。
上吊り引き戸とは、天井や壁面上部にレールを取付け、建具を上から吊るタイプの引き戸のことです。
通常の戸車式の引き戸は、床にレールがあるため床面はフラットになりません。
上吊り引き戸は床にレールを付けないため、床面をフラットにでき、スマートな印象を与えます。
車椅子での移動がスムーズになったり、足腰が弱い高齢者もつまずく心配がありません。
下部にレールがある引き戸だと、レールにゴミが溜まりやすく、掃除が大変です。長く住んでいるうちに
レールに溜まった髪の毛やゴミが扉底面のコマに巻き付き、引き戸が重くなってしまうことを、多くの方が経験されているのではないでしょうか。
上吊り引き戸は見切りがないほうが美しいが
上吊り引き戸は、どんな場所にでも設置できますが、床材の種類が変わる場所では、床材の厚さや材質が異なるため、必ず見切りを入れる必要があります。
このため、上吊り引き戸が最も美しく設置できるのは、同じ床材がスムーズに連続している場所です。
床に何も設置する必要がないので、スッキリとした仕上がりになるのです。
見切りはどんなときに生まれるか
床材がフローリングでもクッションフロアでもフロアタイルでも、異なる床材を使用したときは見切りが必要です。
また同じフロアタイルの床材でも、木目調と石調だったり、同じ木目調でも色が違ったりすると、やはり別の床材です。
床材の貼り方向も重要です。床材は、基本的には部屋の長い方向に貼って、視覚的に部屋を広く見せる効果を出すのが一般的です。
部屋の手前から奥に向かう距離より左右の距離が短い場合は、奥に向かって床材を貼ると部屋が広く感じられるのです。
このため、床材の貼り方向が同じでなければ、違う床材を使用した時と同じように、何かしらの見切りが必要になります。
洗面脱衣室への通路に
廊下から洗面脱衣室に入る際の引き戸について考えてみましょう。
廊下はフローリングであることが多く、洗面脱衣室は水がこぼれやすい場所なので防水性の高いクッションフロアやPタイルが貼られていることが多いので
どうしても見切りが入ってしまいます。
ただ、少しくらい見切りが入ったとしても、やはり下部レールを敷くよりは掃除がしやすいでしょう。
かなり細かいポイントとお思いになるかもしれませんが、掃除をするたびに「上吊り引き戸にすればよかった」と後悔することもありますので、参考にしていただきたいと思いました。
上吊り引き戸を希望される場合は、図面にその旨を明記してもらうようにしましょう。工務店の担当者と見切りについてあれこれ相談することで
お施主様がイメージする理想の住まいに近づいていくはずです。